2009-09-30

初合奏

初級と中級の合同吹奏楽クラスが始まって一月が経ちました。今日は先生から貰った譜面の初合奏です。
最初に、前回スケールとリズムの実技テストを受けていなかった2人の学生の補習テストをしました。トランペットの彼は顔を真っ赤にしつつ一生懸命音を出してなんとかCからGまで上がったのに、Aに行かずに降りてきます。先生が2度ほど注意すると、やっとスケールの意味を理解しました。そして、またCから始めてGに到達して、次はAと上がろとしたけれっど、残念ながら力尽きて「ぷわーん」と頼りない音しか出せませんでした。本人も悔しかったらしく、赤い顔のまま先生に「次のスケールテストは1回でパスする」と約束していました。先生はトランペットの彼だけでなく、楽団全員に基礎練習の大切さを説き、「毎日ロングトーンを欠かさないように」と言いました。
もう一人のトロンボーンはずれていたポジションを直されると一度で実技テストをパスできました。

次は指揮の見方の復習です。構えから止めまで指揮に注目するように教則本の12番から30番までの曲を使って練習しました。先生は集中力のない学生には名前を呼んで注目させたり、集中できる学生を見本に演奏させたりしました。教則本の15番からはP(ピアノ:やや弱く)やF(フォルテ:やや強く)の音の強弱の練習も取り入れられました。先生は25番くらいで拍子のテンポを変えても指揮についてくるように試みましたが、これはまだ初級楽団員には早かったようで、先生のテンポについていけたのは私を含めて3にんだけでした。

そしていきなり曲「A Touch Of Baroque」に突入です。クラリネット、サックスで始まり、4小節でフルート、8小節で金管が入ります。
先生は木管が演奏する8小節の間に金管に曲の雰囲気と速さをつかませました。2度ほど木管の8小節を演奏して、「さあ、金管です」と先生が合図を送りました。
ところが入ってきたのは14人の金管のうち5人だけ。それも5人のうち2人が10小節目で脱落です。先生が「何で入らないの?」と尋ねると、1人が「どこで入ったらいいのか分からなかった」(小節を数えていなかった)と応えました。先生は「合図を見た人、手を挙げて」と聞いて、手を挙げたのが11人でした。(残りの3人は指揮を見ていなかった)
リズムをとること、数えること、それに他の何よりも指揮をみることを教えて合奏を再開しました。
この曲はフォルテで始まって、中間部でピアノで優しく語り、また主旋律をフォルテに戻って終わります。先生の指揮棒も中間部で落とし気味で振られました。それを見落としてフォルテで吹き続けた金管を取り挙げて、先生は全員に譜面台の高さと位置の調整を教えました。このように先生は丁寧に体験を通して楽器の演奏と合奏を教えてくれます。
頑張ってついていった甲斐があり曲が通して演奏されました。先生が指揮棒を止めて下ろしたときは私はやっと終わったとホッとしました。この安心感と充実感は楽団全員にあり、隣の人を目を見合わせて微笑みあったり、暫くぼんやりしたりした人がいました。
先生は私の隣のMさんと、前期の授業では初回の合奏が1つの授業で終わらなかったと話していました。私たちが1回の授業で1曲通せて良かったです。

2009-09-29

恋のから騒ぎ

原題「10 Things I hate about you」
シェークスピアの劇「じゃじゃ馬慣らし」を下地にした青春映画。才女ジュリア・スタイルズと今は亡きヒース・レジャーを中心に、(500) days of summer のジョセフ・ゴードン=デビット、バッドボーイズ2でウィルの相手役だったガブリエル・ユニオンなどの若手俳優たちが恋模様を繰り広げます。
怖いはずの主任の先生がテレビドラマのホワイトハウスでCJをしていたアリソン・ジャーニーだから、かなり砕けた高校が舞台です。
高校生のどたばた恋愛喜劇で笑いを誘う一方で、シリアスな場面ではシェークスピアの言葉を借りてほろりとさせます。
決めは「君の瞳に恋してる」(原題「Can't Take My Eyes Off You」)です。この歌を歌われては相手を無視することはできないでしょう。個人的好みで言えば私はPet Shop Boysの歌うCan't Take,,,が好きです。日本題の「君の、、、」はどうにかならないのでしょうか。
ともかく、残念なのは家事をしながらざっと見ただけだったこと。台詞や状況が面白そうだったので、秋の夜長にもう一度みるつもりです。

2009-09-28

I Love You / オフコースでリスニング

久しぶりにオフコースのI Love Youを聞きました。
間奏でアメリカのニュースが流されます。初めてこの曲を聴いたのは中学生だったかしら。そのころ私は英語のクラスでリスニング力をつけようとしていました。当時、聞き取れたのは「ニューヨーク」「マンハッタン」「ジョン・レノン」がやっとでした。I Love Youと同時期に聞いていたYes Yes Yesで流れる都会の喧騒音とイメージが混ざって、ニュースをニューヨークの摩天楼の観光案内だと思っていました。
ところが、今、改めて聞いてみると観光案内だなんてとんでもない。There is sad news today.で始まるニュースは、「ジョン・レノンがチャップマンにニューヨークのマンハッタンにある自宅で銃で撃たれて亡くなった」という内容でした。
リスニング力があがりニュースを最初から最後まで聞き取れるようになったのは嬉しいけれど、そのニュースがジョン・レノンの死亡ニュースだったなんて、素直に喜べない複雑な気持ちです。

2009-09-25

動詞/ 日本語の学習

日本語テューターの1日目のテーマは動詞でした。
日本語も英語と同様に現在と過去で形が変わります。そして丁寧に言うとき、他人にお願いをするとき、言い切りでも形が変わります。日本語を学習する人はこの変化の規則と変化した言葉を同時に覚えなければいけません。私たちが中学校で英語の現在形(see)、過去形(saw)、過去分詞(seen)、現在分詞(seeing)を覚えたときのように。

今は昔(かなり昔)、国語の授業でウ行で終わるのが動詞だと教わりました。日本語ではウ動詞(u-verb)とル動詞(ru-verb)の2種類の動詞があります。

ル動詞は、基本形(辞書に載っている形)がるで終わります。例えば、食べる、寝る、起きる、見るはル動詞です。
ル動詞を丁寧に言うときは(polite form or long form)は最後のルをとって、マスをつけます。食べるは食べます、寝るは寝ます、起きるは起きます、見るは見ますになります。

ウ動詞は、ル動詞以外の動詞。国語の授業で習ったウ行で終わる動詞です。例えば、飲む、読む、話す、聞く、行く、帰るがあります。
ウ動詞を丁寧に言うときは、最後のウ行をイ行に変えてからマスをつけます。例えば、飲むはムをミに変えてからマスをつけて飲みます、読むも同じく飲みます、話すはスをシに変えてからマスをつけて話します、行くは行きますとなります。帰るはルで終わるのでル動詞かと思ったのですが、帰るのルをリに変えてマスをつけ帰りますとなるのでウ動詞でした。

使われている言葉の規則を見つけてからその言葉の文法を作るために、どの文法にも例外があります。日本語もしかり。
日本語の不規則変化をする動詞の例は、するとくるです。
するは基本がシ、それにマスをつけて「します」、否定はマセンをつけて「しません」となります。
くるは基本がキ、それにマスをつけて「きます」、否定はマセンをつけて「きません」となります。

学校で日本語を勉強している人は教科書に新しい言葉が出てくる度に、ル動詞かウ動詞かを見分けてその変化を覚えていきます。
語学の学習に必ずついてくるものに言葉を覚える作業があります。進出語句を覚えずに放っておくと文法も語句もと覚えることがどんどん溜まる一方で、ついに授業を聞いても教科書を読んでも分けが分からなくなる。その状態が進むと勉強が嫌になってしまう。それが分かっているけれど覚える作業は結構面倒なんですよね。

2009-09-16

リズムとタンギング

今日も頑張って早めに到着しました、と偉そうに書いたけれど、実は出入り時間の3分前です。先生の方が早く来ていて扉の前で待っていました。

今回は指揮とリズムの復習とタンギングです。
前回ダメだった金管パート、特にトランペット、それと他のパートの若干名は集中して注意されていました。先生の注意の仕方は、おどけてだらけている人の真似をしたり、正しく出来ている人をべた褒めしたりと、学生の気を逸らさないようにします。そして、後半の指揮つきスケールでは、なかなか手を下ろさずに粘り、根負けして楽器を下ろした学生を「Bastard」とからかうのです。何回も繰り返すうちに構えから止めまで、全員が乱れずにできるようになりました。
R先生の根気強い指導に感心しました。私の知っているS先生なら2度目の注意の後できれて、指揮台の卓袱台返しか前列の譜面台の将棋倒しが起こっているところです。

メンバーも自然に指揮に慣れてきて、楽器の構え、息を吸うタイミング、吐くときの手の場所、終わりの息の止め方が円滑にできるようになりました。最も良かったのは全員が先生を向くようになったことです。ここでも身体を捻じ曲げている人や顔を背けている人には、先生は物まねや学生の座席の向きを変えさせて、先生へ目を向ける集中力をつけさせていました。

音階(スケール)では右隣のVさんが指使いとオクターブキーの使い方を尋ねてきました。何度も音階をするうちに音は出ないけれど指は格好がつくようになりました。Cちゃんは出せる音のみで出せない音のときは待機です。偉いのは待機中もだらけないで楽器を構えて待っています。

リズムでは手拍子の後に実際に吹いていきます。全音符から二分音符へと音の長さがどんどん短くなり、タンギングが厳しくなっていきます。やはり10年近いブランクがあると口の筋肉が弱ってきていて、アンブシュアとタンギングが辛いです。私の下あごが熱を持ち、演奏の合間に冷やしていると、先生にからかわれてしまいました。変な顔を真似されて、ちょっと恥ずかしかったけれど、最終的に一生懸命演奏しているのを褒めてもらったのでよかったです。

家に帰った後も下あごがガタガタで下唇の内側がひりひり痛いです。

2009-09-14

スケールとリズム

アンサンブルを指導するR先生は坊主頭で年齢も国籍も不明な不思議な先生です。指導中は冗談がポンポンと口から出てきます。学生に演奏中の緊張感を持たせつつ、合間にリラックスさせるように、バランスの舵取りが上手です。

2回続けて遅刻した私は、今回は早めに家を出たため、授業開始20分前に着きました。合奏室出入りより10分も前です。
合奏室前で前授業の終了を待っている間に、トロンボーンのHくんと今日から新入りのクラリネットのCちゃんと話をしました。
Hくんは元々トランペットで高校のマーチングバンドに所属していたそうです。この授業ではトランペット希望が多く、それでも授業をとりたい関係から同じ金管のトロンボーンに回ったそうです。私はそれを聞いて人数の少ないパートで良かったと思いました。
Cちゃんはお兄さんのクラリネットの演奏に憧れて楽器をするならクラリネットと決めてました。家でお兄さんのクラリネットを吹こうとして滅茶苦茶怒られて以来、楽器に触っていないし、音楽は初めてだと言います。それでも楽器と教科書を用意してやる気満々です。合奏室への入室を待つ間、彼女は教科書の音符を指差して「この音は何」とか、「(クラリネットは)どうやって組み立てるの」とか、どんどん質問をしてきます。出入りの時間、彼女は当然のようにちょこんと私の隣に座りました。

今日は前回の指揮の復習と譜面を読むことそしてリズムです。
指揮の復習で、構え、息を出すはOKでした。アンサンブルの人たちは大体の指揮の流れは覚えているものの、先生が手を下ろす前にだらけるパートがあるのが残念。次回の課題です。

音階は教科書に沿って行いました。B♭からFまでは前回と同じ。違うのは教科書の音階を読めるようになることです。クラリネットはB♭、フルートはC、アルトサックスはE♭と順に基準の音と音階確かめていきます。
Cちゃんは音が変わる度に表情もくるくる変わってかわいい反応でした。音が変わると指を確かめに私の方を向きます。先生が要求している音がでるのかどうか心配そうな顔をしていました。そして勢い良く吹き、先生にOKをもらうとにこにこしていました。眉と目じりが上がったり下がったりと忙しいです。

リズムは教科書の最後のページにあります。一つ一つを手拍子で確かめます。先生がメンバーの経験者を一人一人指名して手拍子をさせます。次はそれを全員でするのです。72パターンのリズムの内10パターンまで進みました。

授業は早くも終了15分前です。
ここで先生は選んだ(楽器の演奏ができる)人に楽譜を渡して行き、同時に席替えも言い渡しました。私は1st と2ndの2種類の楽譜をもらい、古株Mさんの隣になりました。
端から内側へ順にMさん、私、Vさん(初心者)、Cちゃん(初心者)になり、Cちゃんは私と離れて心細い顔をしてじっと見つめてきました。(そんな顔をされても先生の指定だからと心で言い訳。)
私は隣になったMさんに改めて「同じ楽譜(1st Cla)で宜しく」というと、「私、上の音が吹けないのよね。だから1stは嫌なの」と。Mさんの上の音とはhigh DでなくオクターブキーのD。(えー、そんなぁ。話が違うよ。)
私は一瞬顔が青ざめましたが、すぐに気を取り直して「私が教えるからなんとか吹いて」と押し切りました。
もらった楽譜はテスト用です。期末のペーパーテスト以外に3回の実技テストがあります。初心者と中級者が混じったこのクラスの実技テストは、初心者は音を出せればOK。中級者はアンサンブルの出来で成績が出されます。つまり、中級者となったMさんに担当楽譜を演奏してもらわなければ、クラリネットは私のみ。いくら私が経験者でも2曲全部ソリスト状態は勘弁です。私は心を鬼にしてクラリネットパートを扱いていくことを誓いました。

早速10分間の練習時間、Mさんを突付いてオクターブキーを使った音を一緒に出して行きました。Mさんのスカスカと息の音だけがするB♭より上の音。おばあちゃんだし無理させて何かあっても困る、だけど音がでなければソリストになってしまう、と心の葛藤が続きました。ついにMさんの体力負け。先は長そうです。


2009-09-09

指揮を見る

先週、引っ張り出したクラリネットを吹きに大学へ行きました。私は5分遅れで教室に入りました。

音楽や演劇の授業を行う特別校舎には合奏室(リハーサル室)があります。壁は防音で内側に音響板が張ってあります。
部屋前方のホワイトボードの前に指揮台と指揮椅子、それを取り囲むように椅子と譜面台が配置されています。指揮台の置いていない壁側は3段の段が作ってあります。そこにも椅子と譜面台が置いてあります。合奏室はいつでも合奏練習ができるように作ってあるのです。

遅れて入った私は急いで楽器を準備して、クラリネットスペースの端の椅子に座りました。カリキュラムによると今日の授業はスケールと音符。先生も出席をとって、今日の授業の説明をしたところのようでした。

最初は楽器の構え方とアンブシュアの復習です。楽器ごとに先生の指示の下で構えて音を出しました。クラリネットは1度でOK。

次は指使いです。B♭,C,D,E,Fを出します。先生は丁寧に各楽器の指を教えてくれました。フルートとサックスとクラリネットは経験者がいるために、先生が指の位置を確認しただけでした。フルート経験者はたまたま右隣になったハンサムな男の子。彼がフルートの指使いの見本をパートに見せている間、金髪に隻眼で彫刻のアポロンのような容姿に、他楽器なのに思わず見入ってしまいました。

指使いを覚えると音階です。ここで先生は指揮の見方を教えました。
先生が構えると楽器を構えること。
先生が手を振り上げるときに息を大きく吸い込み、手を下ろすと同時に吹き始めること。
先生が指を結ぶと息を結んで音を出さないこと。
先生が構えを止めるまで、楽器を構え続けること。
この3つの課程を音階の音を出しながら繰り返し練習しました。
可笑しかったのは初心者チューバくんと同じく初心者トロンボーンくん。構えが遅く、先生が手を下ろす前に椅子にダラリと寄りかかってしまうこと。先生が2回も注意を促さなければ姿勢は直りませんでした。

最後に音階を使って音符の勉強です。全音符(whole)、二分音符(half)、四分音符(quater)、八分音符(eighth)の名前と意味、そして手拍子によって長さを覚えました。手拍子は楽器によって長さが振り分けられて、先生の指揮にあわせて手を叩きます。左隣のクラリネットのおばさんはつられ易いタイプのようで、クラリネットは2分音符のはずなのに、四分音符からやがて八分音符になっていました。
また、音を出しての音符の練習では、休符を一人だけフライング。そのときの言い訳が、「私はみんなが休んでいるときも働き続ける真面目なタイプなの」と。あっけらかんとした態度に先生も苦笑いで「積極性は認めるけれど、休符で音を出してもらっては困るよ」と注意をしました。それからもいくつかの音符のパターンの練習でもずれ続ける彼女はどうやらリズム音痴のようです。
片付けのときに私に耳打ちをしました。「初めての楽器がやっと吹けるようになって、音階もリズムもできるようになると楽しいわ。」。先にそう言われてしまうと、「あなたずれているんですけど。」と注意ができませんでした。

私が初めてクラリネットを手に持ったのは遠い遠い昔のことでした。
吹奏楽部に入部したはずなのに練習中は体操着。なぜなら、まずは腹筋運動から始まるからです。そしてマウスピースでのアンブシュアの練習。次にタンギング練習。やっと楽器を組み立てられるようになって、音を出す練習。さらに指使いと音階練習。腹筋運動とアンブシュアから音階練習まで約1ヶ月かかりました。単調な練習だったにも関わらず休まずに部活に通っていたのは、演奏会に向けた練習をしている先輩方に憧れ、その練習の輪に入る日を心待ちにしていたからでした。
初心者の彼女がフライングをしてもリズムがずれても嬉々としてクラリネットを吹く姿に、私自身がクラリネットを習い覚えた頃を思い出しました。

授業の終わりに先生から認可コードをもらえたので、晴れてクラスの一員です。

2009-09-02

楽器演奏

ひょんな理由で10年振りにクラリネットを吹くことになりました。

昨夜遅くにひょこひょこと戸棚の奥から日本から持ってきたクラリネットを出しました。傷がないか点検したら1箇所パッドに不安があるものの大丈夫で安心しました。リードやグリスやスワブもケースに収めて準備完了。

大学の音楽の授業に15分も遅刻してしまいました。教室は音響の整ったリハーサル室。いつでも演奏ができるように指揮台や譜面台が揃えて置いてあります。こっそりと部屋に入ったつもりが、いきなり指揮台の真横に出てしまいました。先生に言われて楽器の準備が整うとオーディションです。

準備をするための場所があり、そこでクラリネットを組み立てて、少々音だしをしました。10年のブランクがあったのになんとか吹けそう。楽器を持って先生の横に立つと「何かやって」と言われ、心の準備もないまま息だけ整えて吹いたのが「朝鮮民謡」の最初のところ。正面に座っていたサックス担当の老韓国人夫婦が姿勢を正して聞いてくれました。斜め前のホルン担当のユダヤ人のお兄さんはこの曲何?と怪訝な顔をしていました。

先生のOKが出たのでほっとしてクラリネットの区域に座ると、次の人の順番になりました。私が木管楽器の最後だったらしく、金管楽器に先生の視線が移りました。トランペットのユダヤ人の男の子が真っ赤な顔をしている割りに気合の入らないパフーンと開放音を出しました。先生がアンブシュアを整えてから音を出すように注意して再挑戦。2度目はパプーとそれなりの音が聞こえました。先生はそれでOK。そして次のトランペットの男の子。どうやら「何かやって」は「音を出して」だったらしいです。それでホルンのお兄さんに怪訝な顔をされたのです。ああ、失敗。

全員のオーディションが終わると、斜め後ろに座っていたあの老夫婦の奥さんに「アンニョンハセヨ」と挨拶されました。「韓国人ではないんです」というと、旦那さんがきれいな日本語で「アリランを吹いたからてっきり韓国人だと思ったよ。日本人なら「さくら」を吹けばよかったのに」と言われてしまいました。それもそうだと思いました。

先生はオーディションに結果全員クラスに認可することを告げました。よかったと胸を撫で下ろしました。これでクラスは確保できました。

この日の授業は呼吸、アンブシュア、タンギングでした。それぞれのパートで先生に指名された人が見本を示します。見本を示した人の中でアルトサックスに知っている顔がありました。以前、英語クラスでエッセイの見直しを交換した人です。音楽の授業は校舎も違うために英語のクラスメートだった彼女に出会うとは意外でした。彼女も私を覚えてくれていて、見本を示したあとで私に手を伸ばして「久しぶりね」と握手と挨拶を交わしました。

片付けでは座席の並びで私と正反対に座っていた老婦人モリーがわざわざ手を伸ばして握手と挨拶をしてくれました。彼女がコンマスです。
音楽それも特にアンサンブルの良いところは楽器演奏者同士が直ぐに打ち解けることです。音を合わせるには気持ちも合わせなくてはいけないことを皆体験上知っているのです。また、楽器の音の特長はその人の性格の特長に類似しているために、言葉を交わさなくても相手のことが分かります。更に、音楽の言葉は世界共通。先生の言葉が他の教科より耳に入りやすく理解できます。

モリー、デビッド、アンナ、マリアと1回目の授業で35人中4人の名前と顔と担当楽器を覚えました。この調子だと一月もしないうちに全員の名前と顔が一致できそうで嬉しいです。