図画工作はロサンゼルス郡美術館(LACMA)の学芸員によって指導されます。毎週決まった時間に地域図書館へ学芸員が派遣されます。地域の子供たちに芸術に親しみ、工作の楽しみを知ってもらうのです。私の住む地域の図書館は毎週火曜の4時から5時です。
派遣された学芸員はそれぞれの得意分野によって子供たちの活動を展開します。油絵、水彩画、粘土、デッサンといろいろです。
更に夏休みの間はサマースクールとして特別な講習会が催されます。例えば、写真の現像、コラージュ製作、消しゴム版画など。私がこの夏一番印象に残ったのは紙漉きでした。
紙漉きの日は日系人の小柄な女性講師が図書館へやってきました。小さな身体からパワフルな講習会を展開してくれました。子供たちは講師に釘付けでした。講師は紙の歴史、用途、材料、紙の作りかたをはきはきとした口調で説明してくれ、子供たちは早く紙漉きを体験してみたくてうずうずしていました。
その日は紙漉きと製本の二つの活動が並行して行われました。子供たちを2つのグループに分けて交互に製本と紙漉きにかかります。図書館員とボランティアも2つに分かれました。
私は紙漉きの担当になりました。子供たちがスノコに漉きあげた紙の水気を抜くのと、スノコから紙をはがすのを手伝います。
スノコにあがった紙の水気をスポンジで吸い取る作業では力加減が分からず、ぐいぐいとスノコにスポンジを押し付ける子もいれば、こわごわとスポンジで紙の表面を撫でるだけの子もいます。それぞれの子供の調子を見ながら何回くらいスポンジを押し付けるか指示したり、手本を見せて真似をさせたりしました。
スノコから紙を剥がす作業ではスノコと紙の間に息を強く吹きかけます。小さな子供で顔を真っ赤にして息を出しても息が足りずに紙が全く剥がれないときは、横からさりげなく息を吹きかけたり、一番剥がれにくいところを先に吹いたりしました。
力みすぎて息を吹くつもりが唾を吹きかけてしまった男の子もいました。「誕生日ケーキのろうそくを吹き消す要領で吹いてごらん」と促すと大抵の子はできるようになりました。
スノコから剥がれた自分独自の紙を見るときはどの子の目も輝いていました。二つとして同じ模様のない紙です。「あなたの作った紙は世界に1枚、あなただけの紙なのよ」と私が言うとこどもたちはにっこりと笑って大切に家に持って帰っていました。子供たちに満足した笑顔を向けられると私も自然に笑顔になります。
私もボランティアのご褒美に製本された日記と手漉きの紙を後日もらいました。この夏の記念としてとってあります。
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