2009-12-28

シャーロック・ホームズ

Sherlockian(シャーロキアン)=Holmesian(ホームジアン)の私は12月25日クリスマスの公開が待ち遠しかったです。

ガイ・リッチー監督の下、ホームズにロバート・ダウニーJr、相棒のワトソン博士にジュード・ロウのビッグな俳優がコンビを組みました。
スコットランドヤードのレストレード警部(マイアミバイスやハンコックのエディ・マーサン)、ホームズが唯一女史と呼んだアイリーネ・アドラー(タイムトラベラーの妻のレイチェル・マックアダムス)、宿敵モリアティ教授(ワールドオブライズのマーク・ストロング)とホームズの物語には欠かせないメンバーが集まりました。

ガイ監督のホームズはイギリス作りでありながらアメリカンな仕上がりでした。どこがアメリカンかというと全体にチープで軽いムード。
イギリス産業革命の申し子のホームズは社会の変革の歪に落ちた被害者を優しく救い上げ、貴族や庶民の枠を超えた鋭い視点でイギリスの変化を見つめます。だから、本のシリーズには重々しいムードが漂います。
一人一人のキャラクターの特長も掴んではいるけれど、本と照らし合わせると矛盾が出てきます。例えば、ワトソン博士は女性や権力者に冷徹なホームズに対してユーモアのある子供や女性に優しい紳士で道徳的な行動を重んじます。自身の大立ち回りは控え、ホームズの健康面や精神面へ心配りをします。

スタートレックの時と同じく、「映画」と割り切って見れば面白い作品となっています。

2009-12-23

アバター

結論から言うと良い映画は3Dでも2Dでも良いので3Dは要らない。

アバターを3Dで観ました。空も森も水も全ての自然が美しく生き生きとして見えました。

アバターの印象は宮崎駿さんの「風の谷のナウシカ」と「天空の城ラピュタ」と「もののけ姫」を足して3で割ったようなもの。
「ナウシカ」と「もののけ姫」に共通する人間と自然との共存がテーマで、「ラピュタ」の不自然に発達した科学への批判と人間の強欲さが描かれていました。
アバターの森にはナウシカの王蟲にあった生物への治癒力があり、もののけ姫のように精霊が住んでいて、アバターの世界にはラピュタと同じ天空に浮かぶ島がありました。

長時間、3Dメガネをかけて見ると目が疲れます。次は2Dで観たいです

2009-12-22

「蹴りたい背中」 綿矢りさ著

「さびしさは鳴る。耳が痛くなるほど高く澄んだ鈴の音で鳴り響いて、胸を締め付けるからせめて周りには聞こえないように、私はプリントを指で千切る。」
蹴りたい背中は以上の1行で始まります。

主人公の長谷川初美、あだ名はハツは高校1年生。中学3年から集団に溶け込めず水に浮く油の生活を送っています。理科の授業のグループ分けでハツはクラスに溶け込めなかったにな川と関わるようになります。にな川とハツとの関係を、中学からの友人絹代はハツの恋愛と茶化します。

ハツは一貫して孤独です。孤独なハツに対して友人の絹代は集団の代表者。蹴りたい背中では冒頭の1行から最後まで集団と孤独が対比されます。
自分の個性を殺して集団の1員になった絹代をハツは羨みながらもバカにした態度を取ります。ハツにとっての理想は自ら選んで孤独になったにな川です。集団に入りたくても入れないハツと反対ににな川は集団と孤独に無頓着です。
ハツは学校生活で1人取り残されて孤独を噛み締めています。けれど集団に入るための努力はしたくない。妙なプライドばかり先に立てて、人との繋がりで肝心なところを見落としています。それは孤独と好悪は別だということ。言い換えれば、ハツはクラスのどのグループにも属していないだけで、クラスメートに嫌われてはいないこと。
にな川は孤独と好悪の区別はついているから、1人でいても平気です。
絹代は集団に属しているけれど、そのグループはクラスの嫌われ者の集まりです。唾を飛ばしてしゃべるから唾本と影であだ名をつけられた塚本もグループの1人。
絹代は自分が属している一癖あってクラスに溶け込めない人ばかりのグループにハツを誘います。ハツはそのグループの一員になることを嫌がります。プライドが邪魔をするのです。傍目から見るとハツも絹代も塚本もクラスに溶け込んでいないのは変わりがないのに。

ハツのコンプレックスを刺激するにな川の背中を蹴ることで孤独の鬱憤を晴らそうとします。

2009-12-20

蛇にピアス 金原ひとみ著

綿矢りさの「蹴りたい背中」には3日かかったけれど、金原ひとみの「蛇にピアス」は1日で読み終えました。理由は文章を味わうのが苦痛だったからです。

主人公ルイは蛇のように先が分かれた舌のスプリットタンを持つ男アマに惹かれて身体改造をします。アマが紹介したシバに頼んで背中には刺青、舌にピアスと身体改造に挑みます。

ルイは「ルイ・ヴィトンのルイ」と自己紹介をして、アマも「アマ・デウスのアマ」と応え、お互いに本名も年齢も知らないまま半年以上の時を一緒に過ごします。ルイがアマの名前と歳を知ったのはアマが死んでから。

身体改造の一つのスプリットタンは舌に細いピアスをつけて、そのピアスをどんどん太くしていき、最後に舌先を切り分けます。
スプリットタンの過程は読むだけで痛さが想像できます。このような苦痛の描写が多いために、私の頭は文章を味わうのを拒否しました。字面を目で追う読書作業はまるで広告チラシを眺めるようなもの。さらさらと一ページ一ページを読み進めていきました。

不思議なことに私は蛇にピアスを途中で止めずに、最終ページまで読んでしまいました。その位、文章に魅力があったのです。

この作品は芥川賞を受賞しました。この年は史上最年少の綿矢りさ「蹴りたい背中」と一歳違いの金原ひとみの同時受賞で話題を呼びました。


2009-12-17

篭りたい

家に「篭りたい」病にかかるときがあります。

学校やボランティアや用があり毎日、外出が続いた上に、8時間以上家を空けた日の翌日は靴を履くのを躊躇します。

人が好きだから、人と会うのはうきうきするし、新しい人との出会いはわくわくします。しかし、「始めまして」の挨拶が一時に10人近くなると、頭の中が大混乱でお名前とお顔を一致させる時間が必要になります。

読みかけの本の続きが知りたいときは、外に出るのが億劫になります。

寒さが苦手です。外で雪が積もっているようなら、出かける用事を全てキャンセルしたくなります。

このような理由で家から出たくない気分、つまり家に「篭りたい」と思うことがあります。大抵の場合、用事を片付けるために外出しなければいけなくなってしまいます。


2009-11-05

A Steady Rain

ブロードウェイで行われているX-Menのヒュー・ジャックマンと新ジェームス・ボンドのダニエル・クレイグの二人劇を見ました。

舞台には二人が座る椅子2脚だけ、背景は劇の途中で街角の絵が2回変わるのみの非常にシンプルな舞台セットでした。ダニエルはベージュのスーツに赤いネクタイ、ヒューは青いシャツに紺のジャケットの衣装。二人は舞台上の椅子に座ったり、舞台に立ちながら、観客の方を向いて1時間半ひたすら話し続けます。

シカゴ警官のジョイ(ダニエル)とデニー(ヒュー)は幼馴染の親友で仕事上のパートナー。ジョイは独身、対してデニーは妻と子供がいる家族思いのお父さんです。ある雨の降る日に起きた事件を巡って二人の友情や家族愛、そして仕事への信念が試されます。

始めは二人とも衣装を上から下まで身につけています。前半デニーがジャケットを脱ぐと腕まくりをした両手が現れます。力強い自信に満ちた語り口で家族や仕事への思いを述べます。後半、ジョイがスーツの上着を脱ぎ、腕まくりをします。そして慎重に友情と仕事への考え方を述べます。その傍らでデニーが捲り上げた袖を下ろします。この時点で立場が逆転するのです。

ダニエルもヒューもアメリカのシカゴ訛りの英語で話していました。二人の台詞はどんなに早口になってもしみじみとした語りかけでも2階席の最後列まではっきりと聞こえてきました。
映画のスクリーンを通した演技よりも生身の人間が直接目の前で見せてくれる演技のほうが迫力がありました。


2009-11-04

Jade Asian Restaurant

地下鉄7番の終点Flushingに新しい中華街があります。そこに飲茶を食べに行きました。

私は飲茶が好きで、香港、シンガポール、ロンドン、LA、ボストン、日本の中華街と飲茶があれば食べています。
NYもマンハッタンの中華街にあるGolden Unicorn、Jin Fongにも食べに行きました。

このお店はワゴン式。中年以上のおばさんが中国語でワゴンの中身をまくし立ててテーブル間を回っています。
面白いのがワゴンが厨房から出てくるのでなく、厨房からお兄さんが出来立ての蒸し物、揚げ物をお盆に載せてワゴンのおばさんへ渡しに来ます。だから、ワゴンおばさんは延々とテーブルの間をグルグル回っています。
お兄さんの仕事は力仕事と決まっているらしく、点心をおばさんに運ぶ、お茶のやかんを運ぶ、お茶汲み、食べ終わった食器を別のワゴンのせた箱に入れていくなどをしていました。
お店全体に若い女性が少ないのです。

お茶はいつものプーアル茶。飲茶を食べるときはプーアル茶と決めています。

今回食べたのは、
米粉のクレープのチャーシュー包み
米粉のクレープの海老包み
魚のすり身団子にねぎとくわい入り
チャーシューまん
海老とほうれん草の蒸し餃子
海老・カニ・フカヒレの蒸し餃子
海老マヨネーズの蒸し餃子

こちらのお店の蒸し物は見た目に美しい仕上げになっていました。皮を緑やオレンジに色づけしているのかと思ったら、薄い半透明の皮から海老やほうれん草が透けて見えていたのです。
海老はぷりぷり、魚団子は白身のお魚をすり身にして山芋と卵を混ぜているのかふわふわでした。
チャーシューまんの皮は酒種アンパンの皮のようにほんのりと甘かったです。
全体の味付けは塩味が薄く、素材の味を生かしたあっさり仕上げになっていました。だからお腹いっぱい食べても胃もたれなし。
味も雰囲気も良かったので、また来たいお店になりました。

会計は座席で伝票の上に現金を置いて出て行くか、入り口横の会計テーブルで支払うかのどちらかで済ませます。

お店のマイナス点は、
お昼時の込み合う時間は合席になります。私たちも他の2組と一緒になりました。
ワゴンおばさんが英語が話せないこと。力仕事のお兄さんも片言の英語です。


2009-11-01

Lombardi's Pizza

NYピザといえばthin crust (薄生地でぱりぱりの食感)が売りです。
このお店のピザはbrick oven(レンガ造りのオーブン)で焼いたぱりぱり生地が熱々で運ばれてきます。

お店の名物はhouse made(お手製)のmeatball(ミートボール)&tomato saurce(トマトソース)の赤いピザかclam(貝から出したばかりの生ハマグリ)とニンニクソースの白いピザです。

お肉の気分でなかった私たちはハマグリピザにしました。$23
14 inchの薄くて軽い生地の上にジューシーな刻みハマグリがのっており、粉にひいたパルメザンチーズの塩味とオリーブオイルでかりかりに揚げたにんにくの甘み、最後の仕上げに一個分のレモンを絞って後味をさっぱりさせます。塩味、甘み、酸っぱさのバランスが良くて油っぽさがなかったのでさっくりとお腹に入りました。

夫はtap beer(生ビール)で私はItalian Soda(シロップで甘みをつけた炭酸水に生クリームがのせてあります)。食後にエスプレッソを飲みました。

〆て$40.90。会計はcash(現金)のみ。場所はSpring Ave&Mott Stの角にあります。

これまで贔屓にしていたBleeker StのJohn's Pizzeriaよりおいしいねと夫と意見が一致しました。

2009-10-31

ハロウィーン in ニューヨーク

LAではパレードに行かなければ見られない大仮装大会。
NYマンハッタンでは街中がハロウィーンムード一色でした。

空港の出口で迎えにきている人に始まり、街へ向かう地下鉄の中、地下鉄駅からホテルまでの2分間の道、そしてホテルロビーと大人も子供も仮装している人だらけ。
ホテルに荷物を置いて、ビアレストラン(居酒屋)に食べに行く間の道のりは仮装行列に紛れこんだよう。この日は雨でもへいちゃらでぞろぞろと歩いています。
極めつけはレストランです。server(ウェイター・ウェイトレス)も客も仮装、仮装、仮装。私たち二人だけ普段の格好だから、一見して観光客だとバレてしまいます。

仮装の傾向を分類すると多い順に、
キャラクターもの(映画、アニメ、マンガに出てくる登場人物)
オリジナル(凝ったものから簡素なものまで)
職業もの(医者、看護士、バレリーナなど)
です。

キャラクターもので多かったのはバットマンのジョーカー。顔を白く塗って赤い口を耳まで裂いてくしゃくしゃ頭の鬘を被るとジョーカーの出来上がり。地下鉄に、あの病院を爆破したナーススタイルのジョーカーが乗ってきました。
子供はやはりキャラクターが大好き。女の子は白雪姫、シンデレラ、ティンカーベル、男の子はスーパーマン、インクレディブル、スパイダーマンがよく見られました。

職業ものは制服をきているだけではひねりがないため不人気です。ちょっぴり外すのがハロウィーンの仮装。例えば、ゾンビかミイラの医者や前出のジョーカーの看護士。見る人に、こんな医者は現実にいないでしょう、と思わせます。

オリジナルで迫力なのはグループで示し合わせてテーマを演出するもの。
例えば、レストラン席で見かけたのが、1ブース5人グループのテーマがロンドンで1人が女王、2人が衛兵、1人が執事、1人がお付の女中。
もう1つのブースはテーマがブロードウェイミュージカルで2人がキャッツ、2人がライオンキング、1人がマンマミーア、1人がビリーエリオット。
彼ら一人一人はひねりも目立ちも低いです。けれど人数を増やすことで演出効果がぐんと上がります。

今年のハロウィーンは土曜日(週末)で更にセービングタイムと重なったために、このお祭りムードが深夜3時(2時)まで続いていました。



2009-10-24

人気空港ランキング 2009

10月23日のロイターによると、プライオリティパスによる空港ラウンジサービスの会員でよく飛行機を利用する1万4500人を対象にした調査では、世界で最悪の空港はロンドンのヒースロー空港で、最も人気のある空港にシンガポールのチャンギ空港が選ばれました。チャンギ空港に次いで、2番目に評価の高かったのは香港国際空港。ヨーロッパの空港で最も人気のある空港はアムステルダムのスキポール空港でした。対して、最悪の空港はヒースロー空港に続いて、パリのシャルル・ドゴール空港とロサンゼルス国際空港でした。

空港の良し悪しを判断した基準がロイターの記事にはありませんでした。そこで調査をした対象から基準を想像してみました。空港のラウンジサービスを受ける人は、仕事で世界を移動する機会の多い人、乗り継ぐ時間又は搭乗まで時間が長い人、座席がファーストクラスかビジネスクラスの人のどれかに該当します。

飛行機で移動する機会の多い人は、世界の複数の空港設備を知っているので、それらの比較ができます。例えば、仕事で空港を利用する人は、空港内にインターネットやファックスやコピーなどの仕事に使えるもの備えられているか、限られた移動時間で乗り継ぎができるように空港が機能的に造られているか、などの空港機能が評価の基準になるでしょう。

利用する飛行機を待つ時間が長い人は、その空港の提供するサービスを多く受けられます。例えば、長旅に備えてシャワー室や仮眠室があるか、好みに応じた食事を提供してくれるレストランがあるか、などの空港の居住性が評価の基準になるでしょう。

座席のグレードの高い人は、空港のサービス価値を判断できます。各航空会社のファーストクラスやビジネスクラスの航空券はエコノミークラスよりも高価なのは当然のこと。その航空券代には空港のラウンジサービスが受けられる、荷物や自身の移動を手伝ってもらえる、などのサービス料が含まれているからです。この人たちには、空港が払った代金に見合ったサービスを提供してくれるかどうかが評価の基準になるでしょう。

空港が備える設備と居心地のよさとコストパフォーマンスの3つの要素を基準にすると、私もヒースロー空港はお世辞にも良いとは言えません。

ヒースロー空港はターミナル間の移動に時間がかかり、搭乗を待っている時に落ち着けるレストランやカフェもなく、高い航空運賃を払って到着した空港は終始工事中で薄暗い。

早くから中継貿易港として発展した国際都市シンガポールは、海の港の経験を空港に生かしています。乗り継ぎがスムーズに行えるように空港内の移動が一目で分かる配置になっています。そして南国の暖かく明るい雰囲気の空港は居住性も高く、レストラン、カフェは勿論、プールまで備えています。レストランはアジア、ヨーロッパ、アメリカにベジタリアンと多様な人に対応できるようになっています。

数多くの空の旅をする人がシンガポールのチャンギ空港に高い評価を、ロンドンのヒースロー空港に低い評価をするのも頷けます。