2010-01-21

デビット・ホックニーを子供たちが描いたら

LACMA(Los Angeles County Museum of Arts)の学芸員によるArt Classの日です。
今日のテーマは風景画(Landscape)。デビッド・ホックニー(David Hockney)の風景画を参考にして理想の風景画を描きます。

まず、観察の時間です。
学芸員は子供たちにホックニーの風景画を見せて、絵全体の印象を尋ねます。子供たちは「暖かい感じがする」「明るくて楽しい絵」「大きな山を背景に町がある」と口々に言いました。

次に、学芸員は絵の色使い、街や木などの描かれているものと細かい部分に注目させて、何を見つけたかを尋ねます。子供たちは我先に発見しようと「山がピンク」「畑がオレンジ」「大きな木が生えている」とつぶやきながら目を凝らして絵を見つめました。

そして、想像を広げる時間(imagination time)です。
学芸員がOKを出すまで子供たちは目を閉じて頭の中で自分だけの風景を思い浮かべます。

最後は思い浮かべた風景を表現する時間です。
今日、使うのは水に溶けるクレヨンと水彩画用の紙です。学芸員がクレヨンの使い方を実際に紙に模範を示しながら説明します。子供たちは熱心に学芸員の手元を見ていました。

子供たちは学芸員から紙とクレヨンを受け取ると予め新聞紙を敷いてあるテーブルに直行して、思い浮かべた風景を忘れないうちにと、せっせと絵を描き始めました。

6歳と5歳の姉妹の姉は「雨(rain)」を妹は「日没(sunset)」を描きました。
妹の沈む太陽は、学芸員が模範で見せたクレヨンの先にちょこっと水をつけるテクニックを応用して、クレヨンの水をつけた面と水をつけていない面を交互に使い、赤やオレンジや黄色のグラデーションを作っていました。
姉は学芸員が見せた水に浸した指でクレヨンを滲ませるテクニックを使い、紙面の上に青や水色や白で分厚い雲を造り、水に浸した手のひら全体で紙面を撫でて雨を降らせていました。

中1の男の子は紙面の中央に樹の太い幹を上部にはぐいぐいと枝を張り出し、下には力強く根を広げました。枝の先に葉っぱを描くかと思っていたら予想に反して、1つの枝の先には家々を、もう一つの枝の先にはNYにあるような背の高いビル群を、更にもう一つの枝の先には工場が描かれました。それぞれの枝の間には蔓のような道路と線路が張り巡らされ車や電車が走らされました。広げた根の片側に牧場が、もう片側には花畑が、そしてそれらの周りに海が描かれました。まるで海原に浮かぶ島に生えた一本の樹のようです。
一目見たら忘れられないその絵を何を思って描いたのか、男の子に説明してもらいました。その子は色はホックニーから、構図は最近見てとても感動した映画から発想を得たと言いました。その映画は宮崎駿監督の「天空の城ラピュタ」でした。

他の子供たちの絵も思いも寄らない独創的な絵でした。大人と違って固定概念がないためか緑の空の色やピンクの樹の色もありました。
終了10分前に一人一人に絵について説明をしてもらいます。緑の空の絵を描いた子供は、(降水量が少ないLAでは)雨が降ると樹や花が生き生きとして蘇り目に映る全ての生物が緑に見えると説明をしていました。ピンクの樹を描いた子供は、ピンク色が大好きなのに家の庭にはピンクの花が少なくてちょっと不満、だから大きくなったらピンクの花をいっぱいつける草木を庭に植えたいと言っていました。

子供たちは学芸員に絵の説明をします。説明に学芸員は耳を傾けます。それから説明を要約して絵を見せながら他の子供たちに伝え、絵の評価を描いた子供に与えます。それが終わると子供たちは自分の絵にサインをして持ち帰ります。


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