帝国ホテルをデザインしたフランク・ロイド・ライトが作った実験建築場のタリアセン・ウェストはスコッツデールにあります。
メイン通りのN Scottsdale blvdを北上してShea Blvdを右折、74通りから104通りを越えるとFrank Lloyd Wright Blvdに交差します。それを左に折れてTaliesenの看板を右折、道なりに丘を上ると突き当りがTaliesin Westです。
ライトの好きな赤を屋根や柱に、山の岩を壁として作られた平屋建ての建物は周囲の砂漠と違和感がありません。
2度の破産を経験したライトがアリゾナにやってきたのは70歳。ここで若い見習い建築家と家やコンサートホールを作る際の実験を行ったので実験建築場とも言われています。
アリゾナの夏は気温40度に達し人が暮らすには不向きなため、この場所は主にライト夫婦の冬の住まいとされました。対して夏の住まいがウィスコンシン州にあるタリアセン・イーストです。
ウェストにはライトのアトリエ、夫妻の住まい、リビングダイニング、社交場、コンサートホール、劇場の6つの建物があります。
ライトの3番目の妻は女優兼音楽家で社交的な性格でした。そこでアトリエと住まい以外は全て彼女の活動を頭においてデザインされました。リビングダイニングは明るく広々としていました。
ライトは人が立つのを嫌ったらしく社交場には60人の人が座れます。座った目線で美しい庭が見渡せるようになっていました。どの部屋も天井が低いにも関わらず圧迫感が少ないのは、椅子に座ることが基準にあり、全ての部屋の壁が最低限しかないからでもあります。現代こそガラスで囲まれた部屋は当時はキャンバスでできていて、必要に応じてキャンバスを下ろしたり上げたりされました。どの部屋にも火を使えるように暖炉が用意されていました。昼間はキャンバスを上げて風通しを良くし、夜はキャンバスを下ろして火の回りに集まり暖をとる。家はキャンプ場のテントのイメージです。
ライトの住まいは他の部屋と比べてこじんまりとしていました。衝立で目隠しをしたベッドはシングルサイズ。70才を超えたライトが昼間に横になったり本を読んだりする長いす。人と話をしたり手紙を書いたりするための机と椅子。これらの3つが置ける6畳間の大きさがライトの居室でした。
妻の部屋が隣にあり、6畳間のここも小さなベッドと机と椅子が置いてあるだけでした。夫妻の机は外に向けて置いてあり、庭と借景の砂漠と山がいつでも眺められます。
室内はヨーロッパ風、外観はアメリカの大自然に沿うように建てられているのに何故か通路は東洋風。中国の宮殿を写した陶磁器の置物が家の角々に置かれています。インテリアに木彫りの七福神。ライトの居室には日本の美術本がありました。妻の部屋は襖を模した柳と水の壁絵が飾られています。東と西の融合が図られていました。
カラカラに乾燥した赤と白の砂地にサボテンがにょきにょき生えている野原にぽつんと建っているタリアセン・ウェストは未だに建築家の卵たちの学習の場になっているそうです。
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