2008-09-06

Traitor

私はデンゼル・ワシントンよりドン・チードルが役者として好きです。デンゼルは天性のカリスマ性がありすぎて、私の目には偉そうしているように映ります。対して、お猿さんのような情けない顔が表情豊かで行動が淡々しているギャップがドンの魅力です。だからドンは天使のくれた時間の道の外れた天使役もスウォードフィッシュの人情溢れる刑事と並んで、ホテルルワンダや今回のtraitorのような社会派の主人公と、幅広い演技ができます。

少しのボタンの掛け違いが大きな惨事を生む恐ろしさを見せられます。
オマールが合衆国で集めた10人の自爆テロ立候補者は一見普通の市民です。ある人は真面目な学生、ある人は子供や家族思いのお父さん、ある人は仕事に忠実なエリート会社員。このような普通の人々がある日突然自爆テロ犯に豹変するのです。
アメリカはキリスト教徒、ユダヤ教徒、ヒンズー教徒、イスラム教徒、仏教徒と全ての信者に信仰の自由を保障しています。日曜日ともなるとクリスチャンの友人はミサに集まり、また敬虔なイスラム教徒のカレッジの先生は男性と握手はしないし、男子生徒が質問をするときはある一定距離に遠ざけます。それでも友人も先生もカレッジで誰にでも分け隔てない態度をとり親切です。
自分にとって身近な人や親しい友人が自爆テロ犯になるなんて予測は不可能です。ニュースを聞いた犯人の友人にとって晴天の霹靂です。

若いイスラム教徒たちの輪に入って宗教論と政治論を交わし、彼らの良心を焚きつけて自爆テロ犯に仕上げるオマールは、他人の命を奪わせる悪いことをしているとは微塵も考えません。アラーのために、他のイスラム教徒たちのために、自分に相応しいことをしていると信じて、フランス、イギリス、アメリカと場所を変えて次々と犯人たちを造っていきます。
物事の思い込みの怖さがじわじわと私の身体を包み、オマールが信仰を熱く語れば語るほど、私は薄ら寒くなりました。

映画が進むにつれてオマールの言動の薄気味悪さよりも、それを仕向けさせている金庫番のイクバルと参謀のサイールの態度に腹が立ちました。この二人のような性質の悪い人を成敗してくれる正義の味方よ、出てこーい、と念じながら見ていました。

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